第1 はじめに

破産法67条は、破産債権者が、破産手続開始時点で破産 者に債務を負担している場合の相殺を、原則、認めています。 相殺の担保的機能に対する期待を保護するためといわれま す。

他方、破産手続の基本原則である債権者平等を損う相殺 は禁じられています。たとえば破産法71条1項2号は、「支払 不能になった後に契約によって負担する債務を専ら破産債権 をもってする相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内 容とする契約を破産者との間で…締結することにより破産者 に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当 時、支払不能であったことを知っていたとき」は、相殺できない と定めています。これは、破産者と破産債権者との新たな取引 等で破産債権者に債務が発生すると、破産者が債権取得の 対価を代物弁済に供したのと同視できる場合があるため、支 払不能後の代物弁済が偏頗行為否認の対象となることとの 均衡を図るものといわれます。

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